さよならカレー君
池を作って1年後のこと。ミシシッピアカミミガメを1匹、死なせてしまった。
仔ガメの頃に購入してから13年。まだまだ高齢と言うにはほど遠かった。
オスのカメで、「カレー君」と名付けていた。もう一匹、メスのミシシッピアカミミガメは「ハヤシさん」。何となくペアっぽい名前にしてみたのだ。
中庭の池では1年しか過ごさせてやれなかった。
家の中で冬眠させ、春になり動きが活発になったので池に放した。すいすいと気持ち良さそうに泳いでいた。
しかし翌日、姿が見えないので、おやと思って探したら、池の底で動かなくなっていた。
死因は分からない。
病気を疑わせる兆候は何もなかった。
前の年、冬眠に入る前には充分に餌を食べ、栄養を蓄えていたはず。
夜に温度が下がった時に体がうまく動かず、溺れてしまったのだろうか。
火葬してあげようと思い業者に問い合わせたところ、頼まれれば荼毘に付すが、小さな動物だと骨も燃えてしまって何も残らないという。
それならばと土葬することにした。空気中に四散するのでなく、何らかの形で、我が家の土になって欲しかった。
中庭のフェンスの脇に、30cmほどの穴を掘って埋めた。
被せた土の上には、桜草を買ってきて植えた。
以来、毎年可憐な花を咲かせてくれる。
咲くのは春先のわずかな期間だけだが、ちょうど命日の頃なので、花が咲くたびにカレー君のことを思い出す。
長生きさせてあげられなくてごめんね、カレー君。